まずは「柱のほぞ抜け」とはどういう現象なのでしょうか。わかりやすいように以下に図で解説していきます。
地震が来たとき、「家はどう揺れるのか」、「家に何が起きるのか」を見ていきましょう。
家の状態 | 柱の状態 |
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平常時 柱はまっすぐしっかり立っています。 |
家の状態 | 柱の状態 |
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地震発生 横揺れで柱が傾きます。少しの地震なら柱が左右にわずかに揺れてまた元の状態に戻りますが・・・。 |
家の状態 | 柱の状態 |
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強い揺れ さらに、強い揺れや、長いゆれが起こると柱は左右に大きく揺れるようになっていきます。 |
家の状態 | 柱の状態 |
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ほぞ抜け より大きく揺れていく、もしくは縦揺れが激しいと柱が上に飛び出し抜けてしまいます。これが「ほぞ抜け」です。 |
家の状態 | 柱の状態 |
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家屋倒壊 一旦抜けた柱は、元の穴に戻ることはまずありません。 こうなると、1階の柱は2階や屋根を支えきれず潰れてしまいす。 |
このように家の柱と土台である基礎部分がはずれてしまうことを「柱のほぞ抜け」と言います。そして、この「ほぞ抜け」が、家の倒壊原因の第1位なのです。
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京都大学生存圏研究所
2階建て木造住宅の倒壊解析動画より -
京都大学生存圏研究所
補強・無補強既存木造住宅の振動台実験の解析動画より
明暗をわけた、その理由
ところが、震度6強もの力がかかったときでも、「柱のほぞ抜け」が発生していない家がありました。しかも、新しい家だけでなく、古い家でもほぞ抜けしていないケースがあったのです。
ほぞ抜けしなかった理由とは?
そして、それらの家の共通点を調べたところわかったのが、柱と基礎部分の連結を強固にする「ホールダウン金物」という器具が付いていたということでした。その「ホールダウン金物」が、柱を守っていたのです。
そして、その事実を受け、政府としても教訓を今後に生かそうということで、建築基準法改正が改正され2000年下記のようになりました。
平成12年6月より建築基準法が変わりました。
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日経ホームページビルダー編
「なぜ新耐震住宅は倒れたか」から引用
そして、このように建築基準法が改正されたことにより、2000年以降に建てられた家は、「ほぞ抜け」に強い家となりました。
ところが、2000年以前に建てられた家や、もっといえば、建築基準法において、ほとんど「耐震」という概念が盛り込まれていなかった昭和56年以前に建てられた家は、依然と地震に弱い家のままなのです。震度7の地震が来たときには、「柱のほぞ抜け」には耐えられません。
そして、日本全国で、このような昭和56年以前に建てられた地震に弱い家は何軒あるでしょう?
しかも、現在そういった家に住んでいるのは、子供が巣立った後の高齢者であることが多いのです。そういった方々は、耐震対策の重要性に気づいていない場合が多いのも事実です。
今すぐやるべき耐震対策とは
家を丸ごと耐震対策をするには、やはりお金がかかります。例えば、大きな地震が来ても落ちないような軽い屋根にし、壁が崩れないように、従来の壁を壊して補強するなど、屋根から土台までどこを取っても「地震が来てもビクともしない家」にしようと思うならば、大がかりな工事が必要になってきます。
耐震工事の種類とその必要性
けれども、「多少壁にヒビが入ろうが、とにかく家が倒れなければよい」と考え、今すぐできるところからやろうとするならば、第一に「柱のほぞ抜け」を防ぐための工事をしたらよいのです。これまで見てきたように、柱のほぞ抜けさえ起きなければ、家の倒壊の約7割は防げるのです。
木造住宅の最優先補強箇所は、家の基礎と柱の連結です
そして、柱のほぞ抜けを防ぐには、家の柱と基礎部分を強固に連結する耐震補強装置、「ホールダウン金具」を取り付ければよいのです。また、同じ「ホールダウン金具」でも、家の外からでも簡単に取り付けられる「外付けホールダウン金具」を利用すれば、従来の工法とは違い、家を取り壊す必要がないため工事費用も抑えられ、家主の負担もかなり軽減されます。工事も一日で終了するので、いちいち仮住まいを用意する必要もありません。
こういった点から、耐震補強装置である「外付けホールダウン金具」は、最も有効で経済的にも負担の少ない最優先補強方法であると、私は考えています。
巷には「地震対策」一つを取っても、いろいろな情報があふれています。そのため、何が重要なのかわからず、迷ってしまう方が多いようです。けれどもそのように迷ったときこそ、以下のことを思い出していただきたいのです。
「震度7レベルの地震が来たときには、家そのものが凶器になる」
このことを思い出してください。
そしてそのために、とにかく「倒壊しない家にする」ということ。それが大事なのです。